インスパイア(INSPIRE)は、本田技研工業が生産・販売しているアッパーミドルサイズセダン。レジェンドとアコードの間に位置する。
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歴史
初代(1989-1995年 CB5/CC3/2型)
ホンダ・インスパイア(初代)
1989年10月12日に5ナンバーの「アコード・インスパイア」誕生。形式名はCB5。1992年に3ナンバーの「インスパイア」CC2(2,500cc)とCC3(2,000cc)が追加される。姉妹車はビガー。
ホンダはこの4年前に英国のブリティシュ・レイランド(のちのBLカーズ、現:MGローバー)とレジェンドを共同開発し登場させていたが、これによりラインナップ上アコードとの間にギャップが生じ、それを埋めるための上級車種投入が望まれていた。さらに、当時のバブル期に、莫大な販売台数が見込めるトヨタ・マークII 、日産・ローレルクラスに当たるモデルがなかったこともあり、これに合わせて直列5気筒エンジンを縦置きにした独特のFFミッドシップ・レイアウトを採ったモデルを開発し、4代目アコードの登場から一ヶ月遅れて発売された。
いざ蓋を開けてみると、マークIIやローレルに迫る販売セールスを記録し、後に3ナンバーシリーズが登場すると、その人気に拍車がかかり、日本国内では惨敗に終わった本家のアコード[1]とは対照的に、大成功をおさめることとなった。以降 登場するホンダの高級車は、しばらくの間このFFミッドシップ・レイアウトが採用された。
ボディは4ドアピラードハードトップのみで、都会的で洒落たスポーティーなスタイルのビガーに対し、よりラグジュアリーに仕立てられており、それは1992年に登場した3ナンバーシリーズにも、そのまま受け継がれた。
バブル期に作られた車だけあり、本革や天童木工による本木目があしらわれたインテリアは従来のホンダ車とは一線を画すもので、ジャガーを思わせる出来映えだった。本木目パネルはユーザーの好みに応じてミルトル、ゼブラ、マドローナ(ビガーのみ)を選択することができた。
エンジンは当初直列5気筒 SOHC 4Valve 2,000ccのG20Aのみでスタート。G20Aはこのクルマの大きな特徴ともいえるもので、高級車に載るものとは思えない高回転、高出力を実現した。それは当時のライバル達の直列6気筒並か、またはそれをも凌駕すると評され、トップエンドにわたるまで比類のないスムーズネスとハイレスポンスを備えていた。5気筒特有の一次振動の対策にはバランサーシャフトで対応している。後に3ナンバー仕様の登場に伴い、2,500ccのG25Aと5PSアップした改良版のG20Aが追加された(5ナンバーは160PSのまま)後においても変わらず、低速からの太いトルクが魅力であるG25Aに対し、レスポンスの良さとトップエンドまで気持ちよく吹け上がるG20Aと、そのキャラクターはハッキリしていた。
しかし、このクルマのもうひとつの特徴ともいえるFFミッドシップが足枷となり、縦置きエンジンゆえに飛び出したギアボックスによる室内スペースの制約や、フロントの荷重軽減による滑りやすい路面や坂上り勾配でのトラクション不足などの弱点が、このレイアウトを採用する間 終始付いて回ることとなった。この特異なレイアウトは、前後の重量配分の適正化による走りの質の向上や、タイヤの切れ角を多く取れ、FFの弱点のひとつである車両の回転半径の縮小をもたらす利点はあるものの、ジャーナリストらは、当時の売れ線であったライバルであるFR高級車の影響を多分に受けて採用されているのではと評した。
その後、トランスミッションの仕様変更を受けたが、三菱・ディアマンテに引き起こされた3ナンバー車旋風もあり、1992年に3ナンバーのインスパイア / ビガーが登場した。これによって、主力は3ナンバーへとシフトされ、5ナンバーのアコードインスパイアは「AG-i」の1グレードのみに整理される。
登場から18年目を迎える現在でも、フロントミッドシップのユニークな駆動レイアウトや、作りこみの良さとスタイリッシュなフォルムは独自の存在で、特にVIP系ドレスアップを好むユーザーにとっては、10系セルシオやY31/32系シーマと比肩する素材として、今なお若者達に愛されている。
キャッチコピーは「高級車異説」。
2代目(1995-1998年 UA1/2/3型)
ホンダ・インスパイア(2代目)
1995年2月23日、初代の誕生から数えて7年目に初めてのフルモデルチェンジを迎える。先代で好評を得たワイド&ローのシルエットはこのモデルにも踏襲されたものの、居住性アップが求められたアメリカ市場からの要望に応えるべく、先代よりも一回りサイズアップされた。アメリカではホンダの高級車ブランド「アキュラ」にて、アキュラ・TLとして販売される。
エンジンは先代から引き継がれた2,000ccのG20Aと2,500ccのG25Aとを踏襲。主力のG25Aは、レギュラー仕様の180PSとハイオク仕様の190PSの2種類があった。
1995年7月6日、レジェンドに搭載されていたV型6気筒 SOHC 4Valve 3,200ccのC32A が追加される。V6エンジン搭載にともないフロントセクションは専用設計となり、全長・全幅ともに大型化している。
1996年11月8日にマイナーチェンジ。運転席・助手席エアバッグやABSなどの安全装備を全車標準装備とした他、外観の変更が行なわれた。
折しもバブル崩壊による不景気の影響を受け、ユーザーの要求はより低い価格帯のモデルへと移っており、また、ファミリーカーの主役をセダンからミニバンへ移行させるきっかけとなった、初代オデッセイの登場と相まって、初代ほどの成功を収めることはなかった。
一部、捜査用覆面パトカーの幹部車両として採用された。
3代目(1998-2003年 UA4/5型)
ホンダ・インスパイア(3代目)
1998年10月15日に、先代登場から異例に早いフルモデルチェンジを迎える。
先代に引き続いてアメリカでの販売も継続されたが、このモデルからは販売に加え生産も、アメリカのオハイオ州にあるHAM(ホンダ・オブ・アメリカ・マニュファクチャリング)に切り換わる。この決定には様々な見方があるが、その一つとして、国内のアッパーミドルクラスのマーケットが、RVブームに端を発し、今日に至るミニバンのヒットで、年々シュリンクしてどのモデルも軒並み販売成績を落としていることと、アメリカ市場に最も比重を置いているホンダにとって、国内専売車を開発するよりも有益につながるとの判断が大きいと見られる。事実、エンジンを含む、このクルマの主要なコンポーネンツもアメリカ、またはカナダで生産されたものを使用していた。
先代よりもパーソナルカーの色合いが濃くなったボディは、アメリカの衝突安全基準に対応するため、サッシュ式ドアを持つ4ドアセダンとなった。また、必ずしも優れているとはいえなかった居住性もアップされ、先代まで採用されてきた伝統の縦置きFFミッドシップレイアウトは廃された。エンジンは先代にあった5気筒が廃止され、新たに開発されたバンク角60度 V型6気筒のJ型のみとなる。ラインナップはSOHC 4Valve VTEC 2,500ccのJ25Aと3,200ccのJ32Aとの2種類。2001年4月4日のマイナーチェンジの際に、J32Aは30PSアップした仕様に変更したが、これは元々アキュラブランドで発売されているクーペモデル(アキュラ・CL)に載せられていたものだった。組み合わされるトランスミッションは、当初Sマチックが装備された4速ATであったが、前記のマイナーチェンジの際に5速に改良された。
4代目(2003-2007年 UC1型)
ホンダ・インスパイア(4代目)
2003年6月18日に、新たなスタイルを纏ったセダンに生まれ変わった。先代に引き続いてサッシュ式ドアを持つセダンボディを踏襲するものの、ボディは北米仕様のアコードのものをベースに開発された。そのため、2代続いてきたアキュラブランドとの連携はこの代からは解消された(アキュラ・TLには専用のボディが与えられ、新たに日欧向けのアコードが北米ではアキュラブランドに追加された)。それに伴い、生産もHAMから国内の埼玉県狭山市にある埼玉製作所に移された。
コンセプトは先代から大きく変わらないものの、よりラクシュアリーな方向へ性格づけされ、乗り心地も若干柔らかくセッティングされている。最大の目玉は、エンジンの「可変シリンダーシステム(VCM)」や「ドライバー支援装置(HiDS)」などの新機構が採用されていることにある。グレードは、「アバンツァーレ」,「30TL」及び「30TE」の3種に整理され、最上グレードの「アバンツァーレ」に各種新機構が搭載されている。
エンジンは先代にあった2,500ccが廃止され、SOHC i-VTEC 3,000ccのJ30Aのみとなった。このエンジンに採用された「VCM」は、低負荷時に後側のバンク(3気筒)を休止させ、250PSの高出力と低燃費とを両立した。組み合わされるトランスミッションは、先代と同様の5速AT(Sマチック付き)。
また、7代目アコードにも採用された「HiDS」は、フロントに設けられたレーダーで自動的に前方の車両との車間距離を保つ「IHCC」(メルセデス Sクラスに搭載したディストロニックとほぼ同機能)、前方の車両との衝突を自動に回避する「CMBS」及び、フロントに設けられたC-MOSカメラ画像を基に車線を認識し車線維持をアシストする「LKAS」を統合したシステムである。この機能は、アコードやインスパイアを皮切りに、その後登場する4代目レジェンドやミニバンのオデッセイ、エリシオンやSUVのCR-Vなど、ホンダの上級車に随時搭載されていった。
2005年11月4日にマイナーチェンジを実施し、フロントグリルの変更とリアを大幅に変更し、テールランプをLED化とした。リアデザインに関しては、ベース車両である北米仕様アコードと競合車であるヒュンダイ・ソナタのリアデザインが、あまりにも酷似していることが原因なのではないかと囁かれているが、ホンダの韓国法人は「韓国市場だけを考慮したものではない」と説明している。
キャッチコピーは「知的高速移動体」。